今や日本では10人に1人が悩んでいるとされている片頭痛
プロハンドボール監督兼選手の宮﨑大輔さんもそのひとり。

選手として活躍する中、20年以上もつらい症状と戦い続けてきた宮﨑さんを救ったのは、
国立大学法人山口大学の小林誠名誉教授とその研究チームが行った
「血管の異常収縮」についての研究だった。

今回、ついに宮﨑大輔さんと小林誠名誉教授の対談が実現。
宮﨑さんを悩ませた片頭痛の原因とは一体何なのか。

2人の対談から多くの人を悩ませる「片頭痛」と、その対策について深掘りしていく。

※日本神経学会・日本頭痛学会・日本神経治療学会 監修:
頭痛の診療ガイドライン作成委員会編集.頭痛の診療ガイドライン 2021,医学書院

宮﨑さんを悩ませた片頭痛とは。

宮﨑さん

初めまして。今日先生にお会いできるのをすごく楽しみにしていました。

小林教授

私もです。今日はよろしくお願いいたします。

宮﨑さん

実は僕、小学生のときから片頭痛に悩まされていました。知人に先生の研究を紹介してもらうまではずっとつらい思いをしてきたんです。

小林教授

事前にお聞きしていましたが、ご苦労されてきたそうですね。

宮﨑さん

そうなんです。僕の片頭痛は頭がズキズキと割れそうなくらい痛くなって、ほとんど気絶に近い状態でした。強い痛みで嘔吐したり…。いくつも病院に連れて行ってもらったんですが、原因がはっきりわからなくて。母親にも心配かけました。

宮崎さん

小林教授

それは本当に大変だったかと思います。その間もハンドボールは続けていたんですか?

宮﨑さん

もちろん続けていました。痛みが出ていないときは全く問題ありませんから。でも頭痛が起こると何もできませんでした。大事な試合を休んだこともあって…チームからのバッシングがつらかったですね。性格がこんなんだから、頭痛って言っても信じてもらえないんですよ。

小林教授

私の患者さんでも重度の頭痛の方がいましたが、周りの理解がなくて苦しんでいました。頭痛くらい我慢できるだろうとか、サボってると言われて。大好きな仕事を辞めざるを得なくなった人もいました。印象に残っているのは主婦の方です。頭痛で家事や子育てができないのを夫にも親にも理解されなくて。結局、頭痛が原因で離婚されたんです。

小林教授

宮﨑さん

僕は小学生から、ハンドボール選手になって海外でプレーして、テレビに出させていただくようになるまでの20年間、ずっと片頭痛という爆弾を抱えていました。週に1〜3回のときもあれば、1日に2回出るときもあったので、まさにいつ爆発するかわからない爆弾。 持病だと思って半ばあきらめていました。

宮﨑さんの片頭痛の原因は「血管の異常収縮」!?

宮﨑さん

ずっと原因がわからなかったんですけど、大人になってから、病院で血管性の片頭痛だと診断されたんです。先生の研究を紹介されて、血管性片頭痛に「血管の異常収縮」が関わっていることを知ったんですけど…。改めてその現象について詳しく教えてもらえますか?

小林教授

もちろんです。私はもともと循環器の救急医で、心筋梗塞や脳卒中の患者さんを診ていました。それらの原因は動脈硬化が知られているんですが、もう一つ、血管を詰まらせてしまう原因があるんです。それが「血管の異常収縮」です。その直前まで正常に動いていた血管が、突然、前触れもなくギュッと縮んで血流を滞らせてしまいます。

前触れもなく突然血管が縮んで、血流を滞らせてしまう異常な収縮

宮﨑さん

勝手に血管が縮んじゃうんですか?

小林教授

そうです。ゴムホースをギュッとつまむと水が塞き止められますよね。それと同じように、突然血管が勝手に縮むんです。

小林教授

脳の血流に異常が出ると、片頭痛やめまい、心臓の血管であれば動悸、息切れ、胸の痛みや圧迫感などを引き起こす可能性があります。血管がせき止められてしまえば最悪の場合、脳梗塞。心臓であれば狭心症や心筋梗塞。命の危険がある病気につながることもあるんです。

血管の異常収縮により危険な状態になった脳

宮﨑さん

じゃあやっぱり僕の頭でも「血管の異常収縮」が起きていて、片頭痛を引き起こしていたということですか?

小林教授

その可能性は高いと思います。片頭痛の場合、最初に血管が収縮して、その後バーッと拡張するときに神経を圧迫して痛みが生じます。脳とか膜とかいろんなところを刺激するので、遅れて吐き気が出たりとか。最初の異常収縮のために、頭痛の前に目が見えなくなる人もいます。

宮﨑さん

先生、僕もまさにそれです。まず目が見えなくなるんですよ。チカチカしてそれから視界が半分くらい見えなくなって、それから6時間くらい激痛が続いて。その後、嘔吐を繰り返すんです。…でも、異常収縮はどうして起こるんでしょうか?僕は体力には自信がありますし、健康だと思ってたんですが。

宮崎さんと小林教授

小林教授

それが「血管の異常収縮」の恐ろしいところなんです。現役のスポーツ選手が突然死してしまったニュースを聞いたことありませんか? 彼らも宮﨑さんのように人一倍、健康管理をしていたはずです。それなのに命を奪われてしまった。「血管の異常収縮」は誰にでも前触れなく起こり得るんです。

宮﨑さん

そうすると珍しい症状な気もしますが…

小林教授

とんでもない。我が国では脳や心臓の血管病で突然死する方が毎年5万人ほどおられます。東京ドームの観客数は5万人といわれています。野球中継で映る大勢の観客、それに匹敵する数の方が毎年血管病でなくなっているんです。これは、仕方ない、不運だった、では絶対に済まされない数字なんです。

小林教授